■ The Raconteurs "Broken Boy Soldiers"
個人的に2枚のアルバムが凄く気に入ってるホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトがパワー・ポップ系のアーティスト、ブレンダン・ベンソンと組んで作ったプロジェクト・バンド、ということでブレンダン・ベンソンは不勉強ながら知らなかったんだけどアルバム出た時から結構気にはなっていた1枚。シングルヒットした「Steady, As She Goes」がどっちかというと昔のイギリスのパブロック・バンド的な結構レトロな感じだったからジャック・ホワイトのキレ具合に馴染んでいた僕のイメージとは結構外れてて「あれ?」と思ったもんだ。で、アルバム通して聴いて見ると、シングルのイメージと全く同様に60年代〜70年代のフーとかスモール・フェイセズとか、あの辺のイメージを彷彿とさせる音作りでちょっと驚いてしまった。作ってる彼らも結構意識してるっぽくて、ジャケもなんだか昔の名盤風なレトロな感じである。ここまでコンセプトをはっきりして徹底してやってくれると「今どき古くさい」ということもなく、結構新鮮だったりするのが面白いところ。「Store Bought Bones」なんてオルガンが暴れて、まるでアイアン・バタフライだし。しかし不思議なのはジャック・ホワイトの毒気みたいなものがあまり感じられないことで、これはきっとブレンダン・ベンソンのオーラが全体を支配してるのかも。ということで次はブレンダン・ベンソンの作品を聴いてみなくては、と思ったのでした。■ Boston "Boston" (Reissue)
いやー、これはね。(しばし絶句)結構涙ものですよ。ボストンのこのアルバムは、個人的
にもの凄く思い入れあってね。何せ、30年くらい前に始めて東京に出てきた時に最初に行ったライヴが後楽園(現東京ドーム)のボストンの初来日公演だったんだよね。当時はいい席を確保するテクもコネもなく、2階席最上部分に張り付くようにして見たんだけど、初めて見る本格的ロックバンドのライヴに感動してました。僕が本格的にチャートを聴くようになって、1ヶ月くらいした頃、当時デビューしたばかりの彼らのこのアルバムからのシングル「宇宙の彼方に」(More Than A Feeling)をチャート番組でフェーディングの猛烈に激しいAMラジオのノイズ越しに聴いた時は感動して、すぐアルバムを買いに走ったもんね。それからしばらくというもの歌詞カードを片手にひたすら聴いた甲斐あって、今でも9割方全曲そらで歌えちゃったりする。しかし今聴いてもこれはやはり名盤だな。去年トム・ショルツ自らリマスターした再発盤でしかも紙ジャケという、昔のファンにはたまらない仕様。この発売を教えてくれたけいさんには感謝です。■ NaS "Hip Hop Is Dead"
英語を母国語としてない我々がアメリカのヒップホップを聴く時に、どうしても楽曲評価サイドに偏らざるを得ないのは致し方のないところ。もちろんだからといってリリックを無視しても良いということにはならず、リリックを押さえるべきアーティストや作品については歌詞カードと向き合ってパフォーマーのメッセージを受け止めるべきであるのはいうまでもない。ただ楽曲的に極めてストイックなビートオンリーのトラックにリリックのメッセージ性だけで高い評価を、というのはやはり我々非英語圏のリスナーに取っては辛い。その点ナスの偉いところはメッセージ性を妥協することなく、かつ楽曲のエンターテインメント性も常に維持してくれるところで、我々としてまず楽曲で引き込まれていくことができるので評価がしやすい。ジェイZとの長らくのビーフも和解をみて、これまでのコロンビアからそのジェイZ率いるデフ・ジャムに移籍したドロップした第1弾、ということでシーンではいやでも注目を集めている本作だけど、本人はそんなこととは関係なく、いきなり繰り出すメッセージが『ヒップホップはもう死んだ』というショッキングなもの。リリックを追ってみると、彼がジェイZとのビーフをやめた理由が何となく判る。今そういう身内の諍いをしてる場合じゃない、最近の成り上がりラッパー達の拝金主義、女やドラッグ、周りへのディスだけしかない貧困なリリックとテクのなさがヒップホップを殺しちまったんだ!という叫び。トラックのクオリティは相変わらず高く、「You Can't Kill Me」「Carry On Tradition」なんて上記のリリックと併せてトラックはひたすら格好いいし、ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイ・アムと組んだタイトルナンバーはロック調のサンプリングが今までにない感じで新鮮。極めつけはあのナタリー・コールとナット・キング・コールの「Unforgettable」をベーストラック・ループにまんま使いきってしまっている「Can't Forget About You」。といってもセルアウトにならずにリズムに乗りきってライムしているナスのテクがあるからこそのトラックの充実度というべきだろう。これからのデフ・ジャムでのナスの活躍が期待できそうな1枚。ああ、ナスのアルバムは昨年ものでも12月発売で最近だったからつい力が入って書きすぎちゃった。続きはまた来週ね。

■ Bob Dylan "Modern Times"
名は前から知っていたが日本好きのインディー・バンド(猫ケース?)だと思っていた。ああ勘違い。実はエミルー・ハリスからキャスリーン・エドワーズにつながる清冽さを持ち味としたカントリー系女性シンガー・ソングライターという、僕のツボにはまるタイプの人だと今回初めて認識。Allmusic.comで「これが2006年のべストの一つでないというなら何がベストなのか?」なんていうえらい気張ったコメントが付いていたので興味本位もあって聴いてみた。のっけからクリスタルのような声でかなりテンションの高い歌声が。これで延々とやられるとちょっと疲れるところだが、一曲一曲が結構短いのでテンポよく聴けた。多分何度も聞き返すうちにどんどんはまっていくのでは、そんなことを思わせる不思議な作品ではある。
ブランクを感じさせず、円熟と貫禄を感じさせる充実作。聴く前の期待に違わず、どっしりとした楽曲展開、嫌味なく心地よくバックの演奏に乗ってストレートに歌声を聞かせる3人。特にラストの「I Hope」のゴスペル的カタルシスに結構はまった。多くの曲が70年代から80年代にかけて僕らの世代が聞き親しんだウェスト・コースト系ロックのエレメントを持っていて、僕ら中年ロックファンはきっと楽しく聴けるだろうし、そのへんが今度のグラミーのアルバム部門にノミネートされた所以でもあるのだろう。「So Hard」のイントロのギターリフを聴いてイーグルスの「In The City」(アルバム『The Long Run』所収)を思い出したのは多分僕だけではないよね。彼らのスタジオワークを収録したDVDも楽しい。

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